特定非営利活動法人日本ウミガメ協議会付属

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サンゴの調査

黒島で1986年から続くモニタリング調査と移植の実験により明らかになったこと

八重山諸島のサンゴ礁

1975.11.20 喜屋武1補正.jpg1977年のキャングチ1977.5.5 浦干瀬.jpg1977年のウラビシ

八重山諸島には海中公園地区がいくつもあります。これは1970年代、八重山の中で優れた景観をもっている場所が指定されました。そして、その監視と保全のために、八重山海中公園センター(現在の黒島研究所)が設立されました。その黒島の東側には、キャングチ海中公園があります。ここには、見渡すかぎり1m以上の巨大な枝状のサンゴが群生していました。またサンゴ群落の中には、大潮の干潮時に干上がる場所があります。黒島の北東にあるウラビシも、その一つです。1970年代はあたり一面がテーブル状のサンゴで覆われています(写真2)。どちらの写真も当時の八重山の豊かさを伝えるものです。その後、オニヒトデの大発生や白化現象で壊滅的な被害を受けました。現在のキャングチ、ウラビシは1970年の面影を残す大量の死サンゴしかありません。サンゴが死ぬとたいへん寂しい景観になります。しかし長期的なモニタリングにより、サンゴは自然の流れで増減を繰り返すことがわかってきました。

黒島周辺のサンゴの状況

黒島さんご被度.pdf.jpg図1.黒島周辺のサンゴの被度(被度とは生きたサンゴが岩を覆っている面積)オニヒトデの大発生が収まってからの黒島周辺のサンゴの被度です。黒島には川がなく、赤土や塩分濃度の低下といったサンゴの生育を阻害するものがありません。このため、とても豊かなサンゴ群集が発達していました。しかし1970年後半から1980年前半のオニヒトデの大発生により、壊滅的な食害を受けました。その後、1990年代に急速に回復しました。これはミドリイシというサンゴの仲間が急速に成長したためです。ミドリイシは成長がとても早く、枝状の種類は1年間で15cm以上成長します。その後、度重なる白化現象にサンゴの量は少なくなり、白化に強い種類のサンゴのみが生き残っています。

オニヒトデの数はコントロールできない


図1.jpg大発生したオニヒトデ図2.jpgオニヒトデ駆除の様子
 1981年頃、八重山諸島でオニヒトデが大発生しました。当時は海洋生物の研究が進んでおらず、突如大発生したオニヒトデに様々な研究がおこなわれました。さらに国をあげて大規模な駆除活動が行われました。しかしその成果は無く、八重山のサンゴは壊滅的な被害をうけました。その後オニヒトデは急速に数が減りました。餌であるサンゴを食べ尽くしてしまったからです。そして1990年、八重山のサンゴは回復をはじめました。どうやらサンゴとオニヒトデは食う-食われるの関係で、増減を繰り返しているようです。

JICA サンゴ.jpg図2.オニヒトデの駆除数とサンゴの被度
 このような関係は他の多くの生物でも確認されています。サンゴ礁の生態系は短期的に見れば不安定ですが、長期的に見れば安定しています。現在、再びオニヒトデが増加しており、各地で駆除活動がおこなわれ、一度に千匹以上を駆除した例もあります。しかしオニヒトデの全体の個体数から見れば、極少数です。潜水による手作業ではオニヒトデの数をコントロールできません。本来の目的は駆除数では無く、人が利用するための最小限のサンゴを守ることです。そのためにどうすれば良いのか、1980年の駆除活動の結果を踏まえて考えなければいけません。

白化現象とは何か?

st11_9809_20.jpg1998年の大規模白化現象サンゴはイソギンチャクの仲間で、流れてくるものを捕まえて食べています。しかし熱帯の海は綺麗過ぎて餌がありません。本来はとても貧弱な海です。サンゴはその栄養不足を解消するため、褐虫藻(かっちゅうそう)と共生しています。褐虫藻は体が1/100mmと小さく、サンゴの中に無数に住んでいます。私たちが見るサンゴの色彩は、この褐虫藻の色です。褐虫藻は光合成によりエネルギーを生産し、サンゴに与えます。これによりサンゴは栄養不足を補っています。しかしこのサンゴと褐虫藻の関係は微妙なバランスでなりたっています。一般に知られているのは高水温による白化です。海水温が30℃以上が続くとサンゴは褐虫藻を排出します。しばらくは生きますので、水温が低下すればまた褐虫藻をとりこみ再生します。水温の低下は台風により、海水が掻き回されることでおこります。八重山では1998年と2007年に大規模な白化現象がおこりサンゴが減少しました。海水温の問題ですから地域レベルでは対応できません。私たちができることは、それ以外の環境負荷を軽減することでしょう。

移植で作られたサンゴ群落は健全か?

P3280003.JPG左:自然に定着したサンゴ、右:移植され死んだサンゴ失われたサンゴ礁を再生するために、各地でサンゴの移植がおこなわれています。1990年代、当研究所は日本においてはじめての大規模なサンゴ移植を実施しました。その結果、様々な問題が発生しました。移植はダイバーによる手作業で一つずつ植えます。これを海中でおこなうのですから、たいへんな労力です。移植されたサンゴは生き残る確率が低く、ほとんど数年後に死滅しています。移植に適した種は決まっており、自然がもつ多様性を再現できません。残念ながらこれらの問題は現在も改善されていません。移植では部分的にサンゴ群落を作れますが、海の大きさを考えれば微々たるものです。サンゴ礁の全体の生態系に影響を与えることはできないでしょう。何よりも移植によって作られたサンゴ群落は、自然が再生したと言えるでしょうか?潮干狩りの前に、輸入されたアサリを撒くのと同じです。写真は移植され死んだサンゴと、自然に定着した生きたサンゴです。サンゴの卵は海流によって広く分散されます。移植しなくても条件がよければ、自然にサンゴは定着します。1990年代八重山のサンゴは移植されなくても自然と回復しました。赤土や構造物により海の環境を変えないことが、長期的なサンゴ礁の保全になります。