特定非営利活動法人日本ウミガメ協議会付属

ウミガメが減る理由(更新中です)

ウミガメが減る理由

地域によって様々な理由がありますが、大きな原因は3つです。それは1.砂浜の悪化、2.漁業の犠牲、3.食用としての捕獲です。
1.砂浜の悪化

繁殖地が無くなることは、その動物にとって一番の問題です。ウミガメの繁殖地である砂浜は年々悪化しています。
●砂浜の消失




写真は左が1978年、右が2007年の黒島の西の浜の同じ場所です。2007年は砂が無くなり岩場になっていることがわかります。一方で、黒島港には砂がたまって来ました。砂の侵食は黒島港に新たな堤防ができたためです。このように海流に変化を与える構造物をつくると、砂浜に影響を与えます。そして、砂が港の中に入ると、港内が浅くなります。港が浅いと船の航行に影響がでるので、砂は港の外に廃棄されます。それが繰り返されることで、砂浜自体が消滅します。この他にも、砂は川によって山から海へと運ばれますが、上流にダムができると海へ砂が供給されなくなります。また、埋め立て用の海砂を採取することでも、その沿岸の砂浜が侵食されることが知られています。

海岸に道路や町が作られると、高波から人を守るためにテトラポッドや護岸が設置されます。護岸が設置されることによっても砂が無くなりますし、ウミガメは砂浜の上まで登れずに産卵できません。もし、産卵 できたとしても卵は波によって流されてしまいます。

●光害


沖縄の人工海浜。図は、Witherington and Martin 1996を改変Witherington and Martin 1996 より引用

砂浜の近くに人が住むようになると外灯が設置されます。ウミガメは灯りを嫌うために、その近くでは産卵しなくなります。しかし、人口が増え、都市が発達すると明るい砂浜ばかりになります。ウミガメは仕方なく、明かりがある砂浜でも産卵しなくてはいけません。このような砂浜だと子ガメは海へいけません。それは子ガメは光に向かう習性があるからです。上の写真は、光によって迷走する子ガメの足跡です。時として、外灯に誘われて路上に迷い込み、溝に落ちて出られず衰弱死したり、車に踏みつぶされることもあります。

もっと悲惨なケースもあります。砂浜へ誰もが安全にアクセスできるようにスロープを作ることもありますが、それはウミガメが道路に出れるという意味でもあります。そのため、産卵にきた母ガメが車にはねられる事例もあります。


砂浜におけるウミガメの問題を挙げてきました。しかし、外灯が無い道は安全でしょうか。護岸がなければ台風の度に海岸沿いの集落に被害がでます。港がなければ物資は届きません。ダムがなければ水道と電気がなくなります。私たちの生活は、気が付かないだけでウミガメの産卵と結びついてる訳です。

2.漁業とウミガメ


「混獲」という単語があります。これは目的以外の生物が捕れてしまうことです。例えば、魚をとる目的の網にウミガメが入った時に「ウミガメが混獲された」と言います。あまり知られていませんが、ウミガメを含め鯨類や海鳥にとって最大の脅威となっています。


私たち日本ウミガメ協議会は、2002年よりウミガメの漂着死骸の情報を集めています。そして、毎年300~700個体のウミガメが、日本の海岸に流れつくことがわかりました。解剖の結果、主な死亡原因は漁業による犠牲とわかってきました。肺呼吸であるウミガメは、網にからまり、水面で息継ぎができないとおぼれ死んでしまいます。漁業大国である日本では、海岸線のいたるところで様々な漁法で魚をとっています。その中で、ウミガメが犠牲になりやすい漁業は定置網漁と刺し網漁の2つです。


刺し網は魚の回遊ルートに網を張り、網にからまった魚を捕る漁法です。ウミガメは、もがくほどからまり、そのうちに動けなくなります。定置網は魚を網でさえぎり、網の奥へと誘導します。網は返しが付いていて、奥に入るほど、網から出にくい構造になっています。そして、箱網と呼ばれる場所に入った魚を捕獲します。この箱網が水面にあるなら、ウミガメは呼吸できるので大丈夫です。しかし、水中にあるとウミガメは呼吸できません。


これら2つの漁法は効率的に魚を捕れるため、日本で広く普及しています。もし、刺し網と定置網が禁止されれば、私たちの食卓から魚がなくなるでしょう。漁業者としてもウミガメを犠牲にしたいとは思っていませんし、網を壊される迷惑もあります。しかし、この漁法でしか、魚をとれず、仮に禁止されれば生計がなりたちません。漁業にとっても混獲は大きな問題なのです。

刺し網と定置網は、水中ライトや網の構造を変えることで、ウミガメが掛からないようにできます。しかし、魚も捕れなくなるのでは、という漁業者の不信感、何よりも、網を変えるためには多額の費用がかかります。そのため、日本ではまったく普及していないのが現状です。

3.食用としての捕獲 (工事中)