特定非営利活動法人日本ウミガメ協議会付属

うみがめ Q&A (海亀のナゾについて)

皆さまからのよくある質問についてお答えします。
(研究でわかっている範囲で)


1.ウミガメは生まれた浜に戻って産卵しますか?
⇒同じ浜ではありません。産卵に上陸したウミガメに標識をつけて一頭ずつ見分ける調査をします。すると、ほとんど同じ砂浜に戻ってきます。しかし、他の砂浜に移動することもあります。また、人工的に砂浜を作っても産卵します。一方で、小笠原にくる母ガメは、小笠原生まれです。つまり、その「地域」に戻って来るのであって、「同じ浜」というほど厳密ではありません。

2.ウミガメのオスメスはどうやって見分けますか?
⇒ウミガメは甲らの長さが80-90㎝で大人になります。80㎝以上になると、オスはしっぽが伸びます。メスは子どもと同じで短いままです。つまり80㎝以上で尾が長ければオス、短ければメスとわかります。しかし、80cm以下のサイズは、体に穴をあけて内視鏡で卵(もしくは精巣)を観察しないとわかりません。

3.ウミガメは何歳かわかりますか?寿命は何歳ですか?
⇒腕の骨に年輪ができますから、それを調べるとわかります。目安としては、アオウミガメなら40㎝10才、80㎝25才ぐらいです。しかし、ウミガメの成長は個体や生息場所で成長が倍以上も違うことがあります。このため何歳とはわかりません。骨の断面をみないとわからないので、生きたウミガメからは調べられません。野生で見られる最大サイズのウミガメの年齢を調べたところ、寿命はアカウミガメで60歳代ぐらいのようです。

4.ウミガメは美味しいですか?
⇒食用として利用されていました。特にアオウミガメはウミガメの中でも美味しく、食用のために養殖されている場所もあります。小笠原や沖縄では、お店で出しているところもあり、刺身、から揚げ、お汁として食べます。肉は水っぽく、魚の刺身のように柔らかです。

5.死んだウミガメを見つけました。何で死んだかわかりますか?
⇒死因はいろいろあります。例えば、病気、寒さで衰弱死、サメに襲われるなど。しかし、死んだウミガメを解剖すると、お腹に餌がたくさん入っていて傷もないことがほとんどです。このため、病気などで衰弱したのではなく、魚を捕るために設置された網に絡まって溺れ死ぬと考えられています。一般に言われているゴミを食べて死ぬことは滅多にありません。また、甲らにスクリューの傷があっても、死んだ後の漂流中にぶつかるケースが多いようです。

6.ウミガメは時速何キロで泳いでいますか?
⇒以前は、最速20-40kmで泳ぐと言われていました。近年、小型の速度計が開発され、実際にウミガメに装着して調べられました。その結果は、アカやアオでは0.6m/秒、オサガメ0.9m/秒でした。時速に直すと2.1kmと3.4kmです。最も早いと言われるオサガメは、瞬間で2.8m/秒(時速 約10㎞)の記録があります。もちろん、サメなどの外敵から逃げる時はもっと早いかもしれませんが、少なくとも今まで想像されたよりもゆっくり過ごしているようです。

7.ウミガメは鳴きますか?
⇒ウミガメには声帯が無いため、鳴き声を出せません。まれに、口のかみ合せが悪く、呼吸の時に擦れて音を出す個体がいますが、声を出している訳ではありません。しかし、近年の研究でほとんどのウミガメは、砂浜で卵から子ガメに孵化した直後は音を出すことがわかってきました。このウミガメの声は、今最も注目されている研究課題の一つです。

8. 世界で一番 重たいウミガメは何キロですか?
⇒ウミガメ類の中で一番大きいのはオサガメです。FAO(国際連合食糧農業機関)の記録としては、1988年にイギリスで見つかった256cm、916㎏が最大です。しかし、ウミガメの重さを測定することはたいへんな作業です。例えば、産卵にくる母ガメは100キロ以上もあり人の手で運べません。砂浜にクレーンのような大型車両を入れるのも難しいです。実際には、記録がないだけで、もっと重たいウミガメもいるかもしれません。

9. ウミガメ卵(肉)を食べると健康に良いって本当ですか?
根拠はありません。地域によっては特別な効能がある、という言い伝えがあります。しかし、栄養として特別に優れた面はありません。宮崎県で盗卵が盛んにおこなわれていた時代、ウミガメ卵とニワトリ卵の栄養価を比較してウミガメ卵の方が栄養が少ないことを示して盗卵を減らした、という事例もあるぐらいです。

10. 黒島でウミガメの産卵はみれますか?
⇒黒島ではウミガメの産卵は年に10回ほどです。2週間に一回ぐらいしかありません。このため黒島で出会える確率は数%です。日本では小笠原諸島、和歌山県みなべ、屋久島では、毎日のように産卵する砂浜があります。残念ながら、産卵をみようと思ってウミガメを邪魔する人が後を絶ちません。前記3つの地域では、地方行政や地元団体が窓口となって調査者とともに産卵を観察できます。お母さんガメの気持ちも考えて、地元ルールを守って観察しましょう。

11. ウミガメはお家で飼育できますか?
⇒飼育できません。ウミガメは水産資源保護法、種の保存法、ワシントン条約などで規制されており許可なく捕獲できません。捕獲許可は、学術研究や伝統的な利用を除いて、得ることはまずできません。仮に何らかの方法で入手したとしても、寿命が長いために個人で一生面倒を見ることはできませんので、動物愛護の観点からも推奨できません。ウミガメは水族館やダイビングで見るから感動できる動物です。

12. ウミガメは満月に産卵するのですか?
⇒満月は関係ありません。この理由を説明するために、先ず、母ガメの産卵間隔と月の満ち欠けをお話しします。母ガメは一年に何回も産卵します。そして、その産卵間隔は約2週間です。例えば、八重山諸島のアオウミガメは年6回、約12日の間隔で産卵します。次に、月は約30日周期で満ち欠けをします。新月(月が見えない)を1日とすると、一日毎に月は大きくなり、8日目に半月、15日目に満月となります。満月を過ぎると月は小さくなり、22日目に半月になり、30日目に再び新月となります。仮に、新月(1日)に母ガメが産卵すると、次の産卵は12日目となります。つまり、満月の少し前です。その次の産卵は24日目なので、半月よりも少し月が欠けた頃に産卵します。このようにウミガメの産卵周期と月の満ち欠けは一致していないので、月の満ち欠けはウミガメの産卵と関係ないことがわかります。

13.ウミガメは満潮時に産卵しますか?
⇒砂浜によります。ウミガメは干潮でも満潮でも、砂浜に上陸して産卵します。しかし、サンゴ礁の海では砂浜の前にリーフが存在している場合があります。このような砂浜では、干潮時はリーフが干上がり自然の堤防となるため、ウミガメは砂浜にアクセスできません。このため、沖縄の多くの砂浜ではリーフが水面下になる満潮時に、産卵が多くなる傾向にあります。しかし、本州のようにリーフがない地域では、潮の干満とウミガメの上陸時間は関係がないことがわかっています。

14. ウミガメは冬眠しますか?
⇒冬眠しません。大型海洋動物であるウミガメは、寒くなると温かい海域へ移動します。このため、代謝を低くして仮死状態になる[冬眠]という習性はありません。冬眠とは異なりますが、遊泳力の弱い子ガメや逃げ場の少ない海域に迷いこんだウミガメは、冬の寒さに耐えられず、海岸に打ちあがってしまうことがあります。例えば、毎年 冬になると日本海側で寒さで代謝が下がり、泳げなくなったウミガメが漂着します。

15.卵から親ガメになる確率は5000分の1って本当ですか?
本当のところはわかりません。しかし、現在の推定では1000分の1ぐらいです。この大人になる確率は、母ガメがその一生で産み落とす卵数から推定されます。例えば、あるメスが一生に10個の卵を生んだとします。その10個のうち2個が無事に大人まで成長すれば(繁殖にはオスとメスが必要なので2個必要)、今の世代と次世代の個体数は変わりません。つまり、大人になる確率は10個に2個なので、5分の1となります。

この計算をウミガメに当てはめてみると。
1.ある母ガメは40歳で大人になり、60歳で寿命を迎えたとします。
2.この20年間(60歳ー40歳)に、2年に一度砂浜に産卵のため移動したとします。つまり、生涯で10年ほど産卵の機会があります。
3.ウミガメは1年に複数回産卵するので、1年に3回産卵したとします。そうすると10年×3回なので、30回産卵します。
4.一度の産卵で約100個の卵を産むので、この母ガメは生涯に3000個(30回×100個)の卵を産むことになります。
5.オスとメスの2個体がいないと繁殖できないので、親ガメになる確率は1500分に1となります。

上記は、端数を除いたわかりやすい数字で計算しています。現在までに分かっているアカウミガメの平均的な成熟年齢、寿命、死亡率を具体的に入れると、およそ1000分の1になります。昔、5000分の1と考えられていたのは、大人になる年齢や寿命などの情報が今よりも曖昧だったためです(寿命を100歳とするなら、上記の計算では大人になるのは4500個【≒5000個】に1個となります)

産み落とされた卵や子ガメを一生追跡できる標識があれば、直接的に大人になる卵数を調べられます。しかし、今の技術では不可能なので、おおよその推定しかできないわけです。

16. なぜ鹿児島県にアカウミガメの産卵が多いのですか?
黒潮に関係しています。アカウミガメの産卵地は北太平洋で日本だけです。日本で生まれたアカウミガメは、北太平洋における日本の反対側にあるハワイやメキシコ海域に移動します。それらの海域において大きくなり、成熟サイズになると日本に戻ってきます。つまり、日本で生まれた子ガメは太平洋を横断しなければいけません。子ガメは遊泳力が弱いため、自力で太平洋を横断することは困難です。そこで、黒潮に乗って移動していると考えられています。そのため、黒潮が日本に最も近くなる鹿児島県(特に屋久島と種子島)において産卵が多いと考えられています。

17. ヒメウミガメは珍しいですか?
⇒日本で見つかるのは、年に数例です。ヒメウミガメはインド洋やアメリカ大陸の周辺に生息しています。しかし、海はつながっていますし、ウミガメは遊泳力に優れています。このため、稀に日本の近海にも来遊してきます。例えるなら、海外旅行中にたまたま出会うようなものです。クロウミガメでも同様のことが言えます。